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アニメ『ツルネ -風舞高校弓道部-』の感想

アニメ
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ツルネ -風舞高校弓道部-

原作の小説は未読、他媒体からの情報もなしで見たアニメ『ツルネ -風舞高校弓道部-』1期(全13話)の感想
物語の内容に関するネタバレがあります。

また、Free!を見てからこちらを見始めた為その比較が多く、Free!に関するネタバレも少々あります。

ツルネ -風舞高校弓道部-のあらすじと基本情報

アニメ『ツルネ -風舞高校弓道部-』あらすじ

弓道経験者の主人公・成宮湊は風舞高校に進学する。弓道部もあるその高校で、同じ中学から進学した幼馴染や友人からは湊が中学時代は弓道部に所属していて弓道経験者でもある事から当然弓道部に入ると思い誘われるが湊は頑なに断って…。

著者
綾野ことこ
イラスト
森本ちなつ
アニメーション制作会社
京都アニメーション(出版も同じ)
アニメ初回放送期間
2018年10月22日 – 2019年1月21日
放送局
NHK総合
話数
全13話

ツルネアニメ序盤の感想

アニメ『Free!』と比較してばかりになった

見始めた頃は、丁度『Free!』を全部視聴し終えたばかりだったので「部活もの・青春・男子高生主体・悩みを抱え部活に参加するつもりがない主人公・それを導き支える部活仲間・小説が原作・同じアニメーション制作会社」と重なる部分がかなりあったのもあり、どうしてもFree!と比較しながら見てしまったためすんなり入り込めなかった。

そもそもhuluで配信が始まってすぐお気に入りリストに入れたのに見始めるのに上記が理由で躊躇していた。絶対比較してしまうと分かってたから。結局割とすぐに見始めてしまったけど、案の定比較した。

アニメ『Free!』シリーズを知らない人に向けた説明

Free!のあらすじと説明
高校入学をした主人公はずっと水泳をしていたけれど中学の時にとある出来事から水泳部もやめていて高校でも水泳はしないといっていた。
けれど周りの誘いなどもあり流れから参加する事になって…といった導入で、あとは学生の部活動に合わせて部活、水泳を通して自分や人と向き合っていく青春学園もの。
3期放送され特別版も公開、各シーズンごとに話をまとめた劇場版も公開されて、今年2021年には新作の劇場映画も公開されて来年2022年はその後半も劇場で公開予定。

比較してしまい後ろ向きな意識からの滑り出し

実を言うとかなり抵抗があったから本当はもっと時間を置いてから見た方が素直に楽しめたと思う。けれど家族の強い希望もあって見る事に。そのためなかなか気持ちを切り替えられなかった私はひねくれた気持ちで序盤を見ていて、1話目を終えた時点で危うく切る(視聴をやめる)所だった。

という事で比較してしまった物は仕方ない、私個人の視点でFree!と比較してみての違いを改めて挙げていく。

Free!がのり塩ならツルネはうま塩

何故ポテトチップスで例えたのかは置いておいて、パッと浮かんだのがのり塩と旨塩。ただの薄しおじゃなくて少し高級感もあるけど親しみやすいポテトチップス。誰もが食べる定番ののり塩はファンも多いけど通も好むこだわりの塩を使ったうま塩。いつでもどこでも売っているわけではない。

ただうま塩を選ぶ人は新作はとりあえず試す派か普段からうす塩を好んで食べる人じゃないと手に取らなかったりする、美味しいのにもったいないけど広まりにくい。

Free!が夏の雨上がりならツルネは梅雨の雨上がり

湿気がぶわっとあがる夏の雨を乗り越えた後、またぐっと気温が上がる前に空の青さと眩しさでテンションが一気に上がるこれから何をしよう!と気合いの入る瞬間が詰まっているのがFree!雨の蒸し暑さも、その後の爽やかさも存分に楽しめる一品。Free!は音楽も映像もそのカラッとした明るさとキャラクター達の悩みや衝突の水底の暗さもバランスよく取り入れている。
キャラクター達はみんな個性的で関係性も明白、登場人物たちが集いぶつかり泳ぐことでその水の色を広げ変えていく。

比較しての説明だから夏としたけどFree!の作品自体は春を基調にして四季を楽しむ構成になってるので春の印象が強い。

一方のツルネはというと下たる雨粒をアジサイが弾く静かな世界の中の小さな彩りを最大限に感じられる、自分の世界に浸りやすい傘の下でじめっとした空気を耐えてあるく。その雨がやんで傘の水気を払い飛ばして出た晴れ間は雨の後をそこに残しているし、この先に続く道も分かっているのに少し心を落ち着けてまた一歩踏み出していけるやさしさが寄り添っている空気。それがツルネに含まれている。
キャラクター達はそれぞれ個性がある割にどれも大人しく落ち着いて治まっているのと、感情を表すシーンが少ない不器用メンバーが多い為に関係性や感情を読み取り近づくのに時間はかかるけれど徐々に色が見えてくる。水たまりに落ちた水滴の波紋が落ち着いた後の水鏡を覗き込む楽しさが終わりに待っている。

Free!は水しぶきがぶつかり広がってまた合わさる、ツルネは水の中の揺らぎを楽しむ作品

どのキャラクターも良くも悪くも精一杯生きているのが伝わってくるし、誰の視点の気持ちも入り込みやすくてそこから連鎖して広がる物語にわくわくするFree!と比べると、ツルネは登場人物もいてみんながそれぞれに違う事を感じて考えて行動しているというのをどこか俯瞰して見つめる事ができる。割とまとまった世界を静かに見守っている気分になる。

比べた事で静かすぎると感じたけれどその静けさがツルネ

Free!も泳いでいる時は皆一人だけど、チームの仲間がいる。一秒でも早く泳いでゴールを目指す、息を呑む勢いと熱さがあるのに比べて

ツルネも弓を引く時は皆一人だけど、チームの仲間がいる。水泳のようにチームワークを必要とするわけではないけど、仲間の呼吸を、弓を感じて一体となって打つ。

どうにも比べてしまいやすかった、ただ

一応ツルネも団体戦での試合出場がテーマとなっているから印象が被るのだけれど、改めて思い返すとツルネでは団体戦の仲間と打ち解けていく事も一つではあるけど個人の忘れていた呼吸を思い出させる、止まった世界を矢が切り裂いていくように風を感じる世界観が主となっている。

実際、皆が意見を合わせたり今分かり合えたメモリアルな瞬間だった!という場面よりも、サッと風が吹いてその風が包んでいる世界を一つに感じるという方が多い。大きな視点からの一体感を描いている。だからこそあの静けさが必要。もちろん弓道の厳かで美しい世界を表すのにも。水泳はあの水をかき分け筋肉を動かし進んで行く躍動感に適度な情熱を視聴者側も感じないといけないけど、ツルネはどこまでも静かでいい、それでこそツルネと言える世界をしっかりまとめている作品。つまりどっちも似た部分が多いけど全体としても伝えたい内容が全く別物と言う事。

絆、努力、根性、熱い情熱、必死にあがく主人公…みたいな要素を期待する場合は他の作品を、時間を吸収していきたい時にはツルネをおすすめする。

ちょっと良い子すぎには感じる

良い子というのは主人公がと言う事ではなくて作品全体を通して悪が無い。嫌味で感じの悪いキャラクターも中に入るのだけどそれを踏まえても個性があるキャラクター達と関係性なんだけど何しろ静かだから読み取りにくい部分もあって、なんやかんやあってもまとまるんだろうなとどこか安心して見てしまう。

みんな悩みや不満があって、でもそれを解決していったり、解決には至らなくても自分なりの向き合い方を見出したりと成長していく姿が見事に描かれているのにまとまりすぎているために薄い印象になっているのがもったいないと感じた。

結構な過去や重い感情を持っているキャラクターがそれなりにいるのに受け止めて咀嚼して飲み込むまでが本人の外に出ないまま終わるパターンがほとんどだったからそれもあって少しぼやけがちになっていた気がする。

特に主人公に関しては割と重い出来事が身体に残っているのにそれを出す場面がほぼないから何だったら周りの方がその出来事に傷ついているシーンが多かった。別にそれでもいいんだけど、また比較してしまうけどFree!の主人公もあまり自分を出すタイプではないのだけどあちらは一本芯が通っててちょっとずれた天然フリー一筋男子なのに対してツルネの主人公は過去に弓道ものすごくやりたがって楽しんでた、以外が残らない。

だから主人公を主人公としないで作品全体の物語として見るとしてもキャラクター同士の化学反応を見られる部分が少なくて内々で片付いてしまうから共感して寄り添うのも手を握って応援するのもちょっとしにくい。黙って見守るスタイルでいくしかない。

あと学生主体の青春ものは割と親が出ないとか添えるだけみたいな感じが多くてツルネもそれなんだけど(出ないわけではない)、友達のお母さんとかは少し違和感があった。ただ息子か娘かでもこの辺りは変わるかもしれないけど。

この人たちはこういう家でこういう性格の家族でその中でこんな風に育った、みたいなのに繋がりにくいのも時折あったからなんだか色あせて感じてツルネの静けさがその点は少しマイナスな方に作用してたようにも思える。せっかく見て読んで楽しめる作品なんだしその辺りはパキッとしてる所があってもいいかなとおもう。

それが素敵に表現されてたヒロアカのかっちゃんやいずくを始めとした生徒たちのファミリーとかはよかった。

強豪校、ライバルだけでなく同じ部の男子主要キャラですらなんかキャラ付けが「出しきらないなら作品ではそれいらなかったのでは?」と思うほどなんかついてるけど活かしきれてない感じがあったから、なくすかもっと押し出すかしてもよかったと思う。

色んなチョコを味見できるけど全部味見しないといけない上に一口食べたら5秒以内に次の味を試していかないといけなくて結局どれが何味でどれが美味しかったのか分からないみたいな感覚だった。とりあえず全部チョコだったっぽい、で終わるのはもったいない。

弓道の映像と音は見事

と言っても私は弓道に携わった事が無いから何とも言えないけど憧れる素敵な弓道(小さい頃弓道の漫画を読んで憧れた事がある)がしっかり描かれていた。弓を放した音、的に当たった音、外れた音…どれもきちんと音が変えられていて素晴らしかった。

一つ言うなら素人だから、美しいんだけど全員美しく見えた物だから初心者は誰とか誰のどのフォームが悪いとかは分かりにくかった、これは現実に見ても多分未経験者には分からないのだろうから仕方ないし、忠実に再現しているのだろうけどもう少し差が分かりやすい描写があっても良かったかな、と思う。
あととある良家に訪れた時の鹿威しの音はもう少し、何かもう少し気持ち良い音でもよかったと思う。

男子学生とかが主要人物の場合の青春アニメって最近見ていると街の描写や周りの情景を写す物が多い。猫とか鳥が鳴いてご飯を食べて、それはペットとして登場したり野生の動物に焦点を当てていたりする事も多いんだけどこれは女子学生がメインの学園ものだとあまりない気がする。会話だけのシーンが単調にならないようになのかわからないけど癒される。

終盤はわりとありがちな展開だけど

分かりやすく変化が起きて分かりやすくフラグが立って見事にフラグが回収されて、とある種安心感すらある展開。で、そこにどう向き合うか、ぶつかり合うかっていう所もよくある流れなんだけど、そこから終わりに向けてのまとめ方は美しかったと思う。

見る側は手に汗握りはしないし、まあなんとかなるんだろうくらいで見ていくから色んなアニメや物語を見た事がある人なら逆にもたついて感じるかもしれない。

ぶつかり合う場面ではよくある聞いてほしい時に限って30秒で終わる話がなかなかできずに3分かかるみたいな展開はドラマ映画アニメ色んな作品で起きるんだけど、最近は多すぎていいから早く言ってしまって…皆も聞いて…ってなる。

もうツルネだったらいっそサクッと話してスッとまとまっても良かったのではと思う。

主人公たちと一緒に時を過ごす感覚は薄い

ツルネは主人公が高校入学をするところから話が始まって、部活物で定番の買い出し、合宿、部活関係の悩み克服、友情、試合、ライバルとそれなりに充実したイベント盛りだくさんだし時系列も前後しない(少年時代の回想は少し入る)から順番に見ていってるはずなんだけど、完全に部活と弓道と心にフォーカスしているのもあって舞台も学校、弓道場、神社、自宅、通学路といろいろあるのに今何時頃なのかが分かりにくい。

ハイキューとかFree!だと今何時頃で学校では何があって何をしてて、何月の何に向けてあとどれくらいだからこれからどのくらいの期間をどうする、みたいなのが織り込まれていて分かりやすいから一緒に春を、夏を、と景色や会話込で体験していけるんだけどツルネはいつ何がどれだけ進んだか、え、もうあれおわったの?どれくらいの期間だったの?みたいなところがあって置いていかれた。
大事なのはそこじゃないからってのは分かるけど、もう少し一緒に時期を感じたかった。雨か雨じゃなかったかくらいしか印象が残ってない。晴れもあったけど記憶にない。放課後もどのくらい夜なのかまだ夕方なのかわからなかった。

せっかくツルネは風を全身に受けたり、風と共にあるような描写を取り入れてるのだから他の所も居れつつさらに際立たせたらよかったなと。

個人的に感じたツルネ(に限らない)のちょっと…な部分

ツルネの弓道部には女子部員も数名いるんだけど、この話が男子高生たちに焦点を当てているのはいいとしてなんというか女性部員がいわゆる「名前の有るモブ女子」。

違いを出すためだけに物申して、男士全員だめになったら喝入れ係をして、みたいに消費されているように少し感じられる部分が多くて残念だった。こちらも当然良い子ぞろいだからそれぞれ個性があって輝けそうなポテンシャルめちゃくちゃあるのにぱぱっとまとまって必要な時にそろっと挟むだけでもったいない。

そういうのは顧問だったり、今作にいないけどマネージャーだったり、仲間内でだって出来る内容を女子部員が担わされていてせっかく活躍していてもその後はフォーカスされないし内面も変化も追えない。都合よく出されてた感じでちょっと、とにかくもったいなかった。この話自体をどちらかよりにする必要もなかったんだからここまで同じ部員同士男女で分ける必要もなかったような。一応そうなりやすくなってしまってる要因はキャラクターにあるといえばあるんだけど、もっと見たかったな。

あとFree!でもこれは思った事で、ツルネに限った話ではないんだけど最近のアニメのキャラクター同士のボディータッチがなんだか気持ち悪いというか過剰なの増えていてそれが挟まるだけで楽しむ気分が削がれる。それが原因ですぐ見るの止めたのがユーリonICE。

作品は面白いしクオリティも高いと聞いてて、フィギュアスケート好きだから見たいんだけどどうしても見る気になれない。なんで不必要に顔近付けてべたべたしたり変な所触ったり険悪なキャラ同士でもすぐ胸ぐら掴んで鼻先付き合わせたりするんだろう。

ツルネでは多かったわけじゃないけど一か所だけうぇ!?みたいな場面があって、そういう行動をとった理由がわからない、触れた場所の意味は分かるけど何で触れるのか、触れるほどのキャラや関係性かとその後最後まで見ていたけどそこまで行かなかったというか。

思春期の繊細な男の子たちだし、思春期の頃って何がどの感情に繋がっているのか曖昧な関係もあったりするしそういうのは別に構わないんだけど、そういうの入れるつもりもない作品で肉体で関係性を出すのにそれ必要ないのに入ってるのは何とも受け付けない。

触れ合わせる必要がないのに必要以上に触れ合わせて、何で触れ合ってるのか触れ合っている事で何かあるのかというのが見ている側に分かるものがあるならいいんだけど無いなら入れないでいてくれた方がいいな。

実際ツルネでもそんなのがあったものだから「この人物がトラウマの元になっている人だから?」「この人物はその触れ方をする事でこっちのキャラから得たい物があるから?」「何か重大な意味合いが二人の間に!?」って完全に推理モードに入ったのに何も無かった。回収できなかった伏線とかならまだしも、回収する物がそもそもないけどなんか意味深に入れてみたい、みたいなのは推理好きが脳みそバグるから控えめでお願いしたい。

2022年に劇場版が公開予定、とまとめ

そんなこんなで不満点もありつつ、それでも綺麗にまとまっていたお話しは終わりまで来ると見ごたえがあった。

続きがあるみたいで(そもそも原作の1巻部分だけが映像化された?)、来年劇場版が公開されるらしい。正直ある程度綺麗にまとまっているからここからどうなるの?とは思うけど配信されたら見たい。
劇場公開日や時期はまだ発表されていない。2022年夏に公開決定。

上に書いた色々が変わっていてほしいというよりはむしろそのままでいてほしい。出来上がって安定してまとまっているツルネの世界をなんだかんだ言って望んでるかもしれない。

2023年、劇場版の配信いつだろう?と思ってたらいつの間にか2期が始まっていました。
見るとしたら一気に見るつもりなので毎週追いかけては見ないのと、ツルネの世界観を味わいたい時になるので少し先になりそう。

まとめ

「この子たちはなんでこういう関係や状況、性格なの?」というのは事象として受け止め深く考え込まないようがいい。物語の原因や流れと結果に関しても同様。

熱い主人公バトル的な物とは無縁だけれど、静けさと内面のゆらぎを楽しむ物語だからそれを見たい人にはもってこい。

1話を見て迷ったら2話まで見てから決めてほしい。私は1話の時は微妙だったけど2話目を見てから一気に惹かれたので

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